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IV. 調査結果へのコメント
  1. 植物編

今回の調査報告のうち、植物の調査結果について 西宮自然保護協会の 近藤 浩文 氏 よりコメントをいただきました。

■ 町中の自然調査結果について

今回の調査対象となったタンポポ、ヘクソカズラ、ヒガンバナについて多くの市民の方々からの報告をみて、市内全域(六甲山地を除く)でよくウオッチングできたと思いました。

タンポポ
  タンポポについては、日本産のカンサイタンポポとヨーロッパ原産の帰化植物セイヨウタンポポとアカミタンポポがみられますが、それらを総合してタンポポとしてウオッチングしてもらったので、ほぼ市内全域でみられたものと思います。
  西宮市内で珍しいのは、シロバナタンポポです。 甲東公民館周辺の上ヶ原台地や満池谷墓地内などごく限られた地域で白花のタンポポが自生でみられます。 一般にカンサイタンポポは田園地帯に、市街地路傍にはセイヨウタンポポとすみわけています。 時には思わぬ町中でカンサイタンポポを見つけますし、セイヨウタンポポはどんどん勢力をひろげつつあります。

ヘクソカズラ
  ヘクソカズラは、ヤイトバナ、サオトメカズラなどとも呼ばれ、つる性で、町中でも生垣や低木の植え込み、編み目のフェンスなどにまといついて、夏の頃、花の中心が赤色で白い筒状の花が群がって咲き、秋は小粒の実をたくさんつけるのでよく目につきます。 これもほぼ全市で見られますが、このヘクソカズラのほとんどは、野鳥が別の所で食べて脱糞と共にこの地に種子を落とし、それが発芽したものと考えられます。 野鳥(小鳥)と植物の共生を考える学習材料のひとつです。

ヒガンバナ
  ヒガンバナも想像以上に全市的にウオッチングされていたのには驚きました。 もともとヒガンバナ(一名マンジュシャゲ)は、六甲山地でもなく、市街地でもなく、人里の田園地帯の田畑のあぜ道に群生がみられ、秋の彼岸(9月20日頃)になると一斉にまっ赤な花が咲きそろったものです。 最近は、各地で田畑の圃場整備がされて土手(あぜ)が改変され、ヒガンバナが姿を消したところが多くなってきました。
  ヒガンバナは有毒植物のひとつで、テクサレバナ、ハカバナ、シビトバナなど、あまりよい名で呼ばれていませんでしたし、一般にあまり好かれていませんでしたが、最近のガーデニングブームで、秋にまっ赤な大きい花が咲きそろう様子が欧米はもちろん日本でも好まれるようになり、赤花だけでなくシロバナマンジュシャゲや黄色、ピンク色など色々の品種の球根が園芸店に出品されています。 きっと町の中でのヒガンバナの報告は、いわゆる自然生(自生)ではなく家庭園芸で栽培されていたものかもしれません。

調査対象以外の植物について》
  報告にあったナンテン、ヤマウルシなども野鳥によって種子が運ばれて発芽成長したものと思われます。
  オナモミは、人の衣服や動物の毛について運ばれる植物ですが、最近では、全体にオナモミよりも大型で、果実も大きい北アメリカ原産のオオオナモミが多く見られます。
  オジギソウは、葉にふれるとおじぎするように葉をしぼませるブラジル原産のマメ科の多年草で、熱帯から亜熱帯に野生化し、日本では沖縄の道ばたなどでみられますが、西宮では自生はまずありません。 園芸店で購入したオジギソウの栽培品をウオッチングされたか、水辺や水田、休耕田近くでは直立して自生するクサネム(マメ科)をオジギソウと思われたのでしょうか。
  ユリの報告がありますが、西宮市内で野生するユリの仲間は、オニユリ、コオニユリ、ササユリ、チゴユリ、ウバユリなどのほか、最近では台湾がふるさとの帰化植物タカサゴユリが、高速道の土手や草原、道ばた、人家の庭などに自生して大繁殖しています。 夏〜秋には、テッポウユリのような筒長の白い花を咲かせるのでよく目につきます。
  エンドウは、野生品は甲子園浜のハマエンドウのみで、町中では栽培品の逸出でしょう。

■ 水辺の自然調査結果について

水辺では、オランダガラシ(クレソン)、ガマ類、カナダモ類のウオッチングでした。

オランダガラシ
  オランダガラシは、ウオータークレス、クレソンの名で西洋料理などで生食されることでおなじみのアブラナ科の多年草。 いわゆる清流のほとりに群生する植物で、汚濁した水質の川では生育しません。 夙川、仁川、船坂川、その他の川、ほぼ清流と思われる地点での自生がウオッチングされています。

ガマ類
  ガマ類のそのほとんどはヒメガマですが、ガマ、コガマもあります。 夙川公民館の片鉾池、甲陽園の大池、甲山なかよし池をはじめ、市内の大小の池に群生が見られますし、有馬川、仁川、武庫川などの川原にも大小の群生がみられ、さらに各地の川べりにも分布がひろがりつつあります。

カナダモ類
  カナダモ類には、オオカナダモ、コカナダモは共に帰化植物で、水質汚濁にもかなり強く繁殖力旺盛で、富栄養の水質の小川や池ではどんどん繁殖します。
それにひきかえ、日本原産のクロモは小型で、かんがい用の田畑の水路などに自生がみられますが、最近は激減の傾向にあり、コカナダモが優勢になりつつあります。

調査対象以外の植物について》
  報告にあるラミーは、和名(日本名)ではカラムシ、日本には繊維資源として古く渡来した植物のひとつです。 このカラムシを食草とする甲虫にラミーカミキリがあります。 川の土手などに群生します。
  ジュズダマ、ツユクサなどは水湿地を好む植物で、各地でウオッチングできます。ハマゴウ・オカヒジキは海浜植物です。オカヒジキは甲子園浜、香櫨園浜の渚(波打ちぎわ)に近い砂浜に自生がみられます。
  ハマゴウは、かつて香櫨園浜に群生していましたが、一時消失し、最近また自生が確認されるようになり、年々成長して、昨年秋には紫色の花を咲かせて話題となりました。

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