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IV. 調査結果へのコメント
  2. 動物編

今回の調査結果のうち、動物の調査結果について 西宮自然保護協会の 三宅 隆三 氏 よりコメントをいただきました。

市内をおおよそ次の3地域に大別して検討しました。
北部県道16号線(甲山高校の北側を走る道路)より北側。山口・ 名塩・生瀬などの地域
中部北部よりは南にあって、阪急神戸線よりも北側の地域。段上・高木・甲東園・上ヶ原・夙川・甲陽園・苦楽園などの地域
南部阪急神戸線よりも南側の地域で、臨海部に造成された埋立地を含みます。瓦木・小松・高須・鳴尾・甲子園・浜脇・香櫨園などの地域

■ 町中の自然調査結果について

【ほ乳類】(対象生物:コウモリキツネ)
  コウモリは、前回調査では分布報告がなかった北部の西部(山口)や南部臨海部の3つの埋立地にも生息回答がありました。 特定の種に限定していないこともあって、ほぼ市内全域に分布域が広がっています。
  キツネは山野に穴を掘ってねぐらにします。 ところがそうした環境がほとんどない南部からも出会い(発見)の報告がありました。 南部にも大きな社寺があり、その境内の社寺林や武庫川など大きめの川の堤防などを根城にする可能性は否定できません。 周辺に田畑も残っていて、家庭の残飯の他にネズミなどを捕らえることも出来そうです。 阪急神戸線とJR神戸線の間の武庫川に近い地域でみつかり、マスコミを賑わしたことが数年前にありました。 前回もそのあたりでの事例が報告されており、その家族が生存し続けている可能性が感じられます。 しかし、阪神本線より南での事例は地域的な連続性も乏しく、鎖をはずされたやや大型の犬を見間違えたと思われます。

【は虫類】(対象生物:トカゲヘビ)
  トカゲは、よく似たカナヘビもトカゲとみなしてよかったので、回答をそのまま信頼してよいでしょう。 前回少なかった南部での発見事例が増えたのが注目できます。 ヘビも種の限定はなかったので見間違える可能性は低いです。 阪急神戸線から阪神本線にかけての範囲には前回もいなかったところが多かったのですが、「前回はいたが今回はいない」ところも増えています。
  ヘビのいない地域が広がったといえます。 このあたりは、西宮では人口密度が高く、中心市街地であり、露出した地面は少ないです。 こうした生物にとって一層生活しにくい環境になっていることがうかがえます。

【鳥類】(対象生物:ツバメキジバトヒヨドリコゲラ)
  ツバメ、ヒヨドリはポピュラーで、そのまま信頼してよいでしょう。 なじみがないと感じられる鳥はコゲラです。 樹勢が弱った幹に穴を掘って巣にしますが、南部は樹木がそれほど多くありません。 公園や街路樹が思い浮かびますが、枯木がそのまま放置されていることはほとんどありません。 コゲラの報告例が南部に少ないこととよく合致しています。 キジバトがほぼ全域に分布している結果が出ています。 これには駅前や社寺の広場に多いドバトを誤って回答した可能性があります。 キジバトは林で暮らす鳥でしたが、急速に市街地に進出してきています。 公園や庭への植樹と関連があり、ハト=平和の考えから敵対する人も少なく、人里が安全で暮らしよいと感じているのでしょう。 しかし現実にはこれほどではなく、もう少し狭い状態でしょう。

【昆虫類】(対象生物:モンシロチョウアオスジアゲハベニシジミゴマダラカミキリカマキリクマゼミカブトムシキリギリスジョロウグモ)
  カブトムシを除いて、どれもほぼ全域に見つかっています。 ゴマダラカミキリは一見珍しい昆虫に思えますが、バラ・ヤナギ・イチジクやポプラによくついています。 あちこちにこれらの木が植えられたり、野生状態で育っていて、広く分布することと符合します。 昆虫は埋立地にもすっかり進出しています。 人の生活を巧みに利用して生きているように感じられます。 カブトムシについては疑問があります。 南部のしかも鳴尾、浜甲子園や埋立地などの地域に生息しているとは考えにくいです。 野外で見つけていたとすれば、ペットが逃げ出したのが偶然に見つかったのでしょう。 また、調査対象以外の発見としてタガメがいたという報告も寄せられていますが、これは嬉しい発見です。

■ 水辺の自然調査結果について

【魚類】(対象生物:アユオイカワフナオオクチバス)
  この4種とも前回の結果と大きな変化はありませんが、アユの発見地点が広がっているのが注目できます。 上流域では人工的な放流が考えられますが、夙川や武庫川での下流域から中流域への広がりは、大阪湾からの自然な遡上と考えられます。 仁川や東川などの分布は武庫川から流れ込んできたと思われますが、汚れの少ない川にすむ魚だけに、下流部の汚れが改善の方向に向かっていることが感じられます。 ただ、目視だけでオイカワなどと区別することは素人には難しく、見まちがいもかなりあると思われます。

【鳥類】(対象生物:カワセミコサギセグロセキレイ/ハクセキレイカイツブリハマシギ)
  カワセミなど5種が対象で、ハマシギは今回が初めてです。 山間の渓谷に普通のカワセミが、明らかに人里に生息域を広げています。 夙川や武庫川では河口近くにまで下りてきています。 前回は南部では夙川の中流まで、武庫川もJR辺りまででした。 一時、人里近くからすっかり消えましたが、ここ10数年ほどの間に徐々に回復してきているのは全国的な傾向でもありますが、自然の保護や保全、環境への関心の高まりが、この結果をもたらしたと思われます。 ハマシギは「羽斑鴫(はまだらしぎ)」を語源とする説があるが、「浜鴫」とも書かれます。 実際にも浜辺(干潟)に多く飛来し、内陸部の小石や砂地の川原にもやってきます。 干潟が埋め立てられたり、川原の整備が進んで 3面がコンクリート張り ※ になったり、芝生を含めて植物が育ち始めると、そこにはこなくなります。 人間本位の環境整備に警鐘をならしてくれる存在の一員とも言えます。 ただ、内陸部のしかもあまり広くない川原などにはほとんどこないので、東川や夙川の支流を含めての上流部、仁川上流部、どん尻川などでの報告には疑問が残ります。
※ 川の両岸と川底がコンクリート張りになっている状態

【両生類】(対象生物:ウシガエル)
  対象のウシガエルの分布には大きな変化はなかったようです。

【甲殻類】(対象生物:サワガニアメリカザリガニヤドカリ)
  対象3種のうちヤドカリの分布に大きな疑問が感じられました。 海岸部に生息する種であることは、調査用紙にも記されていました。 したがって甲子園浜から香櫨園浜(御前浜)にかけての臨海部にのみ生息が期待できます。 ところが北部にも中部にも事例報告があり、しかも少数回答ではありません。 オカヤドカリという内陸部を感じさせるヤドカリはいますが、その分布域は小笠原や奄美諸島など亜熱帯地方。 内陸といっても波しぶきがかかるであろうとされる範囲に生息しています。 西宮の北部は臨海部からは10km近く離れています。 カワニナやタニシ類などの巻貝を、本種と見間違えたのでしょうか。 残念ではありますが今回の結果は削除することが望ましいと思われます。 サワガニも南部の川で見間違えがあると感じられます。 日本では山間の清流にすむ唯一の淡水性のカニです。 水に汚れがあり、海水が入り込む河口近くに本種がいるとは思えません。 イソガニ、ケフサイソガニなど汽水域にすむカニを見間違えた可能性があります。

【昆虫類】(対象生物:オニヤンマハグロトンボアカトンボ類ホタル)
  どれも前回との差はあまりありませんでしたが、ホタルは少数でもおれば人目につくようで、夙川や武庫川での下流域からの報告が注目できます。 水質改善の兆しと受け止めることができます。

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